「メディア業界全体に蔓延る体育会系のノリ」
メディア業界における「体育会系のノリ」は、しばしば悪しき文化として批判されてきました。このノリは、業界における権力構造や上司と部下の関係性、さらには創造的な仕事に対するアプローチにまで深く根付いており、業界の進化を妨げる一因とされています。今回は、メディア業界におけるこの「体育会系のノリ」がどのように広がり、どんな問題を引き起こしているのかを掘り下げてみたいと思います。
体育会系文化とは?
「体育会系のノリ」という言葉が示すものは、スポーツの世界、特に日本の部活動などで見られる上下関係や精神論を重んじる文化です。具体的には、年長者や上司に対する絶対的な敬意、勝利至上主義、そして感情を抑えた集団行動が求められる雰囲気です。この文化は、スポーツの競技場での一体感や団結力を生み出す一方で、時に個人の自由な発想や多様性を抑え込んでしまうという側面もあります。
メディア業界においては、特に報道や制作部門などでこの体育会系のノリが色濃く残っています。朝早くから夜遅くまで働くことが美徳とされ、上司の指示に従うことが最優先される風潮が強くあります。そのため、独創的なアイデアや多様な視点が欠如し、同じような形式やアプローチで物事が進んでしまうことがよくあります。
メディア業界の体育会系文化の根深さ
メディア業界は、従来の「テレビ中心の時代」から、デジタルメディアやSNSの台頭により大きな変革の時期に差し掛かっています。しかし、そんな中でも業界内に残る体育会系文化が、時として新たなアイデアや若手の意見を抑えつけ、時代に合った柔軟な思考を阻害しています。
例えば、テレビ制作の現場では「深夜の放送でも視聴率を取る」「高視聴率を維持することが至上命題」など、視聴率至上主義が強調され、視聴者に迎合したコンテンツ作りが推進されてきました。こうした環境では、挑戦的な企画や斬新な視点が評価されにくく、保守的な制作体制が続きがちです。
また、若手社員や新人クリエイターが多く集まる現場では、年長者や上司の考えに従うことが強調され、発言権が少ないという問題も指摘されています。これが原因で、クリエイティブな仕事に従事する多くの若手が、自己表現を封じ込められてしまうことがあるのです。もちろん、経験を積むことの重要性は理解されているものの、過度に年功序列的なシステムが、業界の創造力や革新性を損なうことに繋がっています。
体育会系文化が生む問題
体育会系文化がメディア業界において問題視される主な理由は、以下の点にあります。
創造力の抑制
メディアの仕事は、柔軟な発想や独創的な視点を活かす場であるべきです。しかし、体育会系文化では、個々の意見や創造性よりも「一致団結」が求められます。このため、アイデアを出し合うよりも、上司や先輩の指示に従うことが優先される傾向が強く、革新的なコンテンツが生まれにくい状況になります。過剰な労働時間
体育会系文化の中では、仕事に対する情熱や責任感を表すために、長時間働くことが求められる場合があります。これが慢性的な過労や心身の疲弊を招き、スタッフのモチベーションや生産性の低下を引き起こします。特に、テレビ業界では24時間稼働している制作現場が多く、仕事とプライベートのバランスが取れなくなっているケースも少なくありません。上下関係の圧力
メディア業界では、上司や先輩からの圧力が強いことがあります。この圧力が過剰になると、パワハラやセクハラといった問題が発生することもあります。また、年長者の考えが絶対視されるため、若手が発言する場が少なくなり、アイデアを出す意欲を失うこともあります。多様性の欠如
体育会系文化では、集団の調和や一致団結が重視されるあまり、異なる価値観や個性が排除されがちです。これにより、メディア業界全体の多様性が損なわれ、視聴者の多様なニーズに応えきれなくなる恐れがあります。特に、SNSなどを活用した多様なコンテンツが求められている今、柔軟な考え方が欠かせないのです。
解決への道
業界の健全な成長を促すためには、体育会系文化の見直しが不可欠です。例えば、意見を自由に交換できる環境作りや、若手社員が積極的に意見を出せる場の確保が重要です。また、過剰な労働時間を減らし、ワークライフバランスを改善するための取り組みが求められています。
さらに、メディア業界における多様性を尊重し、創造性を活かせる風土を作ることが、今後の成長には欠かせません。現場の構造改革が進めば、業界全体が革新的で魅力的なコンテンツを生み出すことができるでしょう。
結論
メディア業界に蔓延する体育会系のノリは、これまで多くの問題を引き起こしてきましたが、今こそその文化を見直し、改革していく時期に来ています。業界内外で新しいアプローチが求められ、より多様で柔軟な思考が必要とされています。これからのメディア業界を支えるのは、上司や先輩の指示に従うだけではなく、自由で創造的な発想を持つ若手たちであるべきです。また、優秀な若手がテレビ業界で活躍できるチャンスや場所をもっと上の立場の人が与えなければ改革は難しいとも思います。今年はフジテレビにとって「信頼回復」へ向けての改革の年だと思っています。